昆虫と自然の原稿を編集部に送付しました.締め切り遅れですみませんでした.

海外の博物館を紹介するシリーズものの原稿です.今回は,アジアの博物館をということで,マレーシア国立サバ大学の熱帯生物・保全研究所の博物館施設昆虫部門を紹介する機会をいただきました.

この博物館施設の設立には現地に3年間ほど住み込んで取り組みました.
ボルネオ島生物多様性保全のための大型国際協力プロジェクトの一環でしたので,いろいろと勉強になることが多かったです.個人的には,人を動かすこと,進行管理すること,成果を評価し計画を軌道修正していくことなど,プロジェクト管理のスキルを修得でき,研究活動などのマネージメントに役立っています.また,生物多様性に関する英語の教科書を6冊ほど作ったり,それをつかって英語で講義をしたりと,英語で海外の人たちに授業する自信もつきました.

仕事的には,純粋(?)サイエンティストでも,実社会で,ちゃんとお国の役に立てるってところを見ていただけたかなと思います.しかし,学問として生物多様性保全にかかわるのと,実際に現地の人たちに理解してもらい,現地のしくみを改革していくこととのギャップはでかいです.生物多様性は資源であり,利権が生じるものであり,個人は変れても組織は既得のものを守りたがるものであることを実感しました,

最近は,社会と関わりをもった自然環境保全の研究を志す若いサイエンティストが増えてきました.生物多様性保全の大掛かりなプロジェクトに参画するチャンスをいただいた者として,これからの仕事は,たぶん,若い人たちが実際の現場で研修をつめる機会を増やし,その経験が高く評価されて職に結びつくような研究者社会の構築に貢献していくことだと思うのだが.その仕事のお役に立つには,まだまだ,修行が足りないようです.


 
(サバ大学熱帯生物・保全研究所と,その昆虫収蔵庫です)



(サバ大学で制作した調査方法と標本管理の教科書です.表紙のイラストとデザインもつくりました)